紙切れ1枚で、自由も、生活も、尊厳も、簡単に奪われた。「人質司法」に終止符を打つためのたたかい
何らかの疑いをかけられた被疑者・被告人を長期間勾留する「人質司法」。その現状を変えるため、国との裁判をはじめた「人質司法に終止符を!訴訟」の原告・浅沼智也さんに、110日間に及んだ勾留の現実と、訴訟にかける思いを聞いた。

もし自分が逮捕されたら、何が起きるのか。有罪無罪を問わず、その先にどれほど過酷な日々が待っているかを知っている人は、少ないかもしれない。
LEDGEが支援する「人質司法に終止符を!訴訟」の原告・浅沼智也さんも「何も知らなかった」一人だった。
逮捕された日、何が起きたのか
「人質司法に終止符を!訴訟」は、何らかの疑いで逮捕された人が、判決を受ける前から長期間勾留され、あらゆる自由や自分の生活を“人質”に取られた状態で捜査へ協力することを強要されるのは、憲法違反だと訴えた裁判だ。
国内外で批判されている日本の「人質司法」をめぐり、複数の原告が司法による人権侵害を可能にする法規定の違憲性を争った、日本で初めての集団訴訟と言える。
浅沼さんの勾留が始まったのは、2024年3月14日。突然、都内の自宅へ押しかけてきた警察官に逮捕され、そのまま青森県内の警察署へ連行された。
持ち出せたのは、着替え1着を詰め込んだ鞄と、咄嗟(とっさ)に友人の電話番号を書き留めた名刺1枚。携帯電話はすぐに押収され、職場以外に連絡することは許されなかった。
何度「事実と違うし、自分はやっていない」と訴えても、聞く耳は持たれない。両手に手錠をかけられ、腰縄で繋がれた状態で、新幹線に乗せられた。
この先、自分はどうなってしまうのか。「逮捕されたときは、何が何だかわからない状態で。留置所へ接見に来てくれた弁護士に今後の流れを説明されるまで、とにかく不安でした」。浅沼さんは当時の心境をそう振り返る。
逮捕されただけで「罪人」のように扱われる日々

逮捕後は、まず警察が取り調べを行い、検察庁へ送致するかを48時間以内に決定する。送致後、検察官が勾留請求を行い、裁判所がそれを認めれば、起訴するか否かを決めるまで、最大20日間勾留期間を延長できる。
起訴された場合は、被告人による保釈請求が認められない限り、裁判が行われ、その判決が出るまで勾留が続く。この際、期間の上限はない。
浅沼さんは逮捕時から否認を続けたが、4月4日に暴行罪で起訴され、その後4回保釈を請求したものの、4回とも却下された。初公判後にようやく5回目の保釈請求が認められるまで、110日間にわたって勾留が続いた。


